It's a beautiful day

取るに足らない、ささやかな出来事について

石を投げる

石投げの夢を見た。
砂浜にひとり立ち、腰に左手を当てて霞む水平線を眺めている。
自分の投げる石はどこまで届くのだろうか。

知らない人は知らないかもしれないが、熱して香りを立たせたクミンを石と和えるとよく飛ぶというのは、その筋の人間であれば常識といっても良い。
いま、ぼくが右手でつかんでいる小石からは、インド料理のような美味しそうな匂いがする。

いつのまにか石投げの世界チャンピオンがやってきて、ぼくの隣に立つ。
チャンピオンの名前は石渡、あだ名はイシビッチー。
石投げ世界記録の保持者だ。

ふたりで肩を並べ、しばらく海を眺める。

チャンピオンはどのくらい遠くに投げられるんですか?
ぼくの問いかけにチャンピオンはうなずき静かに答える。

だいたいスカンジナビア半島と同じくらいの距離まで。

思ったよりも記録の壁は高いようだ。
目の上に左手で庇をつくり水平線のさらにその先を伺う。クミンの香りは潮の香りにかき消されていく。

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