It's a beautiful day

取るに足らない、ささやかな出来事について

夜一人で店にいるということ

仕事のあと家にまっすぐ帰りたくない日があって、そんな時は駅前の珈琲館に寄ることにしてるんだけど。

 

近所の定食屋のカウンターでひとり夕食を食べていると、隣に座った若いカップルの会話が聞こえてきた。夫婦なのか同棲しているのかわからないが話の感じでは一緒に住んでいるようだった。家に帰りたくない日があるって言ったのは男の方で、それを耳にしたぼくは、これはただならぬことになったぞ店内に血の雨が降るかも、と身構えた。

 

しかし女性は、そんな時あるよねと軽く受け流し、残業じゃないはずなのに遅いと思ったら珈琲館にいたんだね、と言う。一見スルーしているように見えて、じわじわと網を広げているのではないだろうか。そんな緊迫感には気づかず男は話をつづける。

 

この前、8時ごろ珈琲館に行ったら、おっさんがひとりでコーヒー飲んでたんだよ。夜の8時だよ、普通なら家族と過ごしてる時間なのに、ひとり寂しく珈琲館でコーヒー。なんか家に帰れない理由とかあるのかなと思ったら、悲しくなっちゃって、ああはなりたくないなあ。

 

それを聞いた女性は薄っすらと微笑みながら、そういうの寂しいね、とか言う。


夜の8時に珈琲館でひとりコーヒーを飲んでるのはお前も一緒だろ、と心の中で突っ込んだのは、ぼくだけだっただろうか。


よくよく考えたら、そんな話をしているカップルのすぐ隣でおっさんがひとりで夕食を食べているのである。彼の鈍感さは底が知れないな、と思った次第。