It's a beautiful day

取るに足らない、ささやかな出来事について

人差し指曲がった

Fingers

中学生のころ、体育の前の休み時間に友人と追いかけっこをしていて、人差し指が曲がった。

知らない人がいるといけないので説明しておくと、人差し指が曲がるのは当たり前なんだけど、第一関節と第二関節の間は普通は曲がってはいけないところだ。逃げる友人の体操服に人差し指の先がかかった瞬間、友人が急な方向転換をして、その曲がってはいけないところが曲がった。

 

 

体育の教師はいつも青いジャージのパンツの両手を突っ込んで偉そうにしてるんで話しかけるのは嫌だったが、さすがに痛いので事の顛末を報告した。
体育の教師から担任に話が伝わり、体操服を着たまま病院に連れていかれた。正確には病院ではなく、柔道の道場に併設されている、いわゆる骨接ぎだ。

ラフな格好をした骨接ぎの先生は、曲がった人差し指をくいくいッとつまむと、二カ所折れてるね、と軽く言った。
人生で初めての骨折に少し興奮しつつも、くいくいッと触られるだけで激痛が走るので、嬉しいのかどうなのかなんとも言えない気分だった。

それから、定期的にその骨接ぎに通った。
そのたびに、くいくいッと引っ張られ、激痛に耐えた。何度行っても痛いままであった。

ある時、待合室で待っていると、骨接ぎの先生が電話で話している声が漏れ聞こえてきた。
駆け落ちしたらしい。
子供もいるのに。
あいつ道場どうするんだ。

その日もまた、曲がった人差し指をくいくいッと引っ張られ、激痛に耐えた。家に帰ると母に、何度通っても痛いままだ。と訴え、次の日整形外科に連れて行ってもらった。
撮影したレントゲンの画像を見ながら医者は、骨折はしてませんね、軽い脱臼だけです、と言った。
脱臼しているところを、くいくいッと引っ張られていたのだから痛いはずだ。
人生初の骨折は脱臼だったのだ。

医者にもらった薬のおかげか痛みはすぐに収まったが、人差し指は曲がったままくっついた。

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