It's a beautiful day

取るに足らない、ささやかな出来事について

ものの呼び方

 

時代とともに呼び名が変わるものがある。
背広がスーツに
ジーパンがジーンズに
汽車が電車に
国鉄がE電になると思わせておいてJRに。

 

そのJRがまだ国鉄だった頃の話。

銭湯帰りと思しき小学生くらいの頬が赤い少年が、中華料理屋に一人で入ってきた。
最近多い小洒落た中華料理屋ではなく、テーブルとカウンターが赤くて床が油でヌルヌルしている、いわゆる「町の中華料理屋」である。
小学生が一人で外食するのは、こういう店でもなかなか珍しい。少年は店内を何度もキョロキョロ見回して落ち着かず、明らかに緊張している様子がうかがえる。

やがておばちゃんが少年のテーブルに注文を取りに来た。
少年は大きな声で元気よく「炒飯と焼き飯をお願いします」と注文した。
こんなことには慣れっこなのだろうか、おばちゃんは優しく炒飯と焼き飯は同じものであると教えてあげる。厳密には違うのだろうけど、当時はそういう認識が一般的だったのだ、
おばちゃんの説明を聞いて「じゃあ、焼き飯だけでいいです」と、小さく返す少年の頬はさらに赤くなっていた。炒飯をやめて焼き飯だけにする、ということなのだろう。同じものなのに。

でもよく考えると、こういう時はどう返すのが正解なのだろうか。炒飯と焼き飯ください、と頼んだら、それは同じものだ、と言われました、はいどうしますか。じゃあ炒飯ください。じゃあ焼き飯ください。どちらも間違えたままではないだろうか。

ラーメンください、が正解に近い気がする。食べたいものとは違ってしまうけれど。

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