It's a beautiful day

取るに足らない、ささやかな出来事について

石を積む

古いお寺の脇に、数え切れないほどの蝉が鳴き競っている森を抜ける道がある。その道を20分ほど登ると、少しだけ開けた展望台に着く。展望台といっても登り道の曲がり角を膨らませて整備してある「ちょっと街が眼下にのぞめる」程度のところだ。その上、景色がいいのは冬の話で、春から秋にかけては葉が視界を隠してしまうため展望は望めず、ただ荒い息を整えるだけの場所になる。

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大事なときに寝てしまう

cat

いやもう、そのまんまなんだけど、ここぞっていうときに寝てしまう傾向がある。傾向がある、というか、確実に寝る。

可愛がっていた猫が重い病気になり医者にも見放され、いよいよもう先がないぞとなって、最後は自宅で家族みんなで看取ろう、ということになった。

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パチパチダンサー

Dance

梅雨の晴れ間の朝、窓を開ける。
吹き込む涼しい風にたっぷりと含まれた湿り気が夏を予感させる。
眼下に立ち並ぶ一軒家のどこから、パチパチ、ドンドンと言う音が聞こえてくる。
パチパチは手拍子で、どんどんはスキップだ。
おそらく。
何しろ、自分が立っている窓辺からは見えない角度から音が聞こえてくるのだ。
我々は、これを「パチパチダンス」と呼んでいる。
窓を開けたとき、パチパチドンドンと聞こえてくると、ああ、彼は今日も元気だと思う。

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ゾンビ自転車

W i u - u u h !

蒸し暑い夏の午後だった。
線路沿いの道を汗をかきかき駅に向かって歩いている途中、自転車が向こうから走ってきた。
走ってきた、と言ってもたいしたスピードではない。もしろユラユラとこっちに向かってくるくらいの感じだ。
自転車に乗っていたのは、ぱっと見たところ特に特徴のない中年の女性で、中途半端な長さの髪を真ん中で分け、目をかっと見開きまばたきもせず、背筋を伸ばしてサドルにまたがっている。

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